木質系印材
印鑑に適した木材の中でも強度があり、動物系印材よりもコストパフォーマンスに優れた材質になります。
本柘(ほんつげ)
櫛や将棋の駒にも使われてきた強くて光沢のある美しい伝統的な素材になります。
柘(ツゲ)の木は、木偏に石という字が表すように、非常に硬い木材になり、工業製品によく素材として使われています。
しかも繊維が詰まっているため、細かい彫刻作業に適しています。
古来から櫛や将棋の駒、そろばんの玉などの加工品に用いられてきましたが、現在は90%以上が印材に使われるようになっています。
国内のツゲ産地は鹿児島県が有名で、「薩摩本柘(さつまほんつげ)」、「本柘」と呼ばれています。繊維分が多く緻密で木質系の中では最も印章彫刻に適しています。
柘(あかね)と比較して木目が細かく味わいのある見た目になっています。
保管する際に注意することしては、水分・乾燥・直射日光・多湿などの条件下では印材に悪影響を及ぼしてひび割れや歪み・変色の原因となります。
柘(あかね)
アカネは十分な実用性と美しさを備えた印材用木材で廉価品として輸入された素材になります。
本柘は鹿児島産ですが、「アカネ」は海外産でかつては「シャムツゲ」とも呼ばれていましたが現在ではシャム以外の産地の素材を「あかね」と呼ぶようになりました。
主に東南アジアやタイが産地になっています。
「アカネ」は柘に似た木材になり、本柘ほど繊維の密度は高くなく耐久性やキメの細かさは劣りますが、硬度はハンコとして使えるほど十分あり、コストパフォーマンスが高いため、役所や企業でも汎用性の高い場面で利用される印材として人気が高い素材になっています。
現在でも官公庁や多くの印章店にて販売が行われている印材になります。
安くてコストパフォーマンスに優れている柘(あかね)ですが、朱肉の油が柘に浸透していくことで次第に脆くなっていきます。
なので印材が柘(あかね)に限ったことではありませんが、押印する際には朱肉に強く押し付けるのではなく、朱肉に軽く叩きつけながら濃さを調節していく必要があります。
動物系印材
経年劣化によるひび割れや歪みに強いのが特徴です。
木質系の印材に比べて値段が高めになります。
黒水牛 -芯持ち-
印材の中でも濡れたような漆黒の艶が重厚感を醸し出し耐久性にも優れている動物系印材です。
黒水牛は東南アジアを中心に生息する沼地を好むウシ科の動物で、多くは農耕用に飼育されています。その水牛の角を印材に加工したものを黒水牛印材と言います。
角は体毛が変質し硬くなった爪のようなもので、牙や歯よりも硬度は低いですが、弾力性に恵まれた実用的な印材として多く使われています。
動物系印材は、木質系印材よりも耐久性、耐摩耗性に優れているため、ビジネスや個人の実印として人気の印材です。
通常、水牛の角1本から印材は1本しか取れません。
その理由は角の中は場所によって密度が違う構造になっており、印材に適しているのは先端に近い中心部だけになります。
樹木の年輪と同じように角にも真ん中に芯が通り、角の芯を印材の芯に合わせて切り出したものを「芯持ち」と呼ばれます。
芯持ちは、天然素材の宿命である経年による歪みやひび割れに強いため、印材に適した部位です。
保管する際の注意点は、乾燥に対してとてもデリケートな素材で太陽光や照明の下に長時間あてることですぐにひび割れてしまう可能性もあります。
保管する時には必ずケースに入れて冷暗所に置いておく必要があります。
メンテナンスとしては印面以外の箇所をオリーブオイルを染み込ませた布や紙で拭いてあげることで長持ちさせることができます。
オランダ水牛(白水牛)
オランダ水牛の角の耐久性は象牙に次ぐ丈夫さを持っており、印材として押しやすい素材です。
そして外観が美しい飴色で女性にも人気の印材になります。
象牙の色よりも落ちついたホワイト系のハンコが欲しいなら一押しの素材です。
黒水牛とは牛の種類が違う「オランダ水牛」または「白水牛」とも呼ばれています。
漆黒の黒水牛とは違い色味に個性があり、淡いクリーム色から茶色の縞や斑が入ったもの、全体に濃色のものなど様々なのも人気のポイントのひとつです。
淡いクリームと茶色の斑が混ざり合う美しい印材。
斑や縞模様がない物が上質とされるが、色や模様のある方が趣もあり好まれる場合もあります。
天然素材であるため同じ模様は存在せず、そういった天然ゆえの個性や風合いがあり、印材として人気があります。
オランダ水牛も黒水牛と同じく乾燥に弱いので、保管する時には冷暗所に置くことが重要です。
メンテナンスとしては黒水牛と同じく印面以外の箇所をオリーブオイルを染み込ませた布や紙で拭くことで長持ちさせることができます。